BtoC-Eコマースに関する法規制対応(2022年の動きも踏まえて)

                                    (2022年12月23日更新)

1 BtoC-Eコマースを取り巻く状況

 SNS やスマートフォンの普及に伴い、BtoC-Eコマースは急速に発展し、その市場規模も年々大きくなっています。特に、2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生活様式の変化に伴い、物販・デジタル分野のBtoC-Eコマースの市場規模が大幅に拡大しています。

 2021年の日本国内の消費者向け電子商取引(BtoC-Eコマース)の市場規模は、20.7兆円でした(※1)。2020年には、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴い物販系の市場規模が拡大した一方で、主として旅行サービスの縮小に伴いサービス系分野の市場規模が大幅に減少し、全体の規模は2019年に比べ縮小しました。しかし、2021年には、2020年に比べ全体的に規模が拡大し、2019年の市場規模を超えるに至りました。

 2021年には徐々に外出機会が回復したものの、その中で市場規模が拡大したことを踏まえると、BtoC-Eコマースが消費者に定着してきたといえそうです。

※1 経済産業省「令和3年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」(2022年8月公表)
  

2 BtoC-Eコマースを巡る法規制(「規約」、「表示」、「プライバシーポリシー」関連)

(1) 複数の法規制
 BtoC-Eコマースにおいては、通常、消費者と交渉等を経ずに画一的に取引を行い、契約内容に関して民法の任意規定を補完・修正するため、取引に関する規約が重要です。その際、民法の強行規定や消費者契約をはじめとする法令に抵触しないか、規約の運用、変更等についても問題ないか、検証する必要があります。
 また、Eコマースは非対面取引であり、口頭での説明等は予定されていないため、消費者に対する説明や誘引方法として、Webページなど広告表示も重要です。消費者向け広告表示については、景品表示法や、通信販売に関する特定商取引法に基づく規制を考慮する必要があります。
 これらに加えて、取り扱う商品・サービスの種類によっては業法を遵守すべき場合もあり、Eコマースでは、通常、消費者(顧客)の個人情報を取得するため、個人情報保護法も遵守する必要があります。その際、「プライバシーポリシー」の作成・運用が重要です。
 これらの法規制は、民事ルールと行政ルールが混在しています。いかなる法令が適用され、違反しないような対応はどのようなものか、具体的な場面ごとに検討・対応が必要です。

(2) 最近の動向
  昨今では、インターネットを取り巻く技術の進歩や社会情勢の変化に伴い、Eコマースに関する法改正等の動きが活発です。例えば、2022年には次のような動きがありました(2022年12月23日時点)。

 2022年2月15日

「アフィリエイト広告等に関する検討会報告書」公表(消費者庁)

 2022年4月1日

2020年・2021年個人情報保護法改正法の全面施行(個人情報保護委員会)

 2022年5月1日

「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」施行
(告示やガイドラインは、こちらに掲載されています)

 2022年6月1日

2020年特商法改正法施行
 ・通信販売に関する規定の新設のほか、電磁的記録によるクーリング・オフの導入も定められています。
 ・消費者庁による事業者説明会資料が参考になります。

 2022年6月1日

2022年消費者契約法改正法公布
 ・事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項について、事業者の重大な過失を除く過失の場合に限り適用されることを明らかにしていないものは無効とされます(改正後消費者契約法8条3項)。

 2022年6月29日

「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改正及び「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部改定
 https://www.caa.go.jp/notice/entry/029287/
 ・主にアフィリエイト広告への対応を念頭に、上記改正・改定が行われました。
 ・管理措置に関する対応についてもご相談を受けております。

 2022年12月22日

 第10回景品表示法検討会
 基本的に報告書(案)の内容で了承されました。報告書最終版は後日公表される見込みです。
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/review_meeting_004/031362.html
 検討会では様々な事項が検討され、報告書の目次をご紹介します。

1 早期に対応すべき課題
 ⑴ 事業者の自主的な取組の促進(確約手続の導入)
   独禁法下のガイドラインを参考に、景表法の観点からガイドラインが制定される予定です。
 ⑵ 課徴金制度における返金措置の促進(電子マネー等の活用など)
 ⑶ 違反行為に対する抑止力の強化(課徴金の割増算定率の適用、課徴金の算定基礎となる売上額の推計等)
 ⑷ 刑事罰の活用
   故意の不当表示に対する直罰規定の導入が提言されました。
 ⑸ 国際化への対応(海外等に所在する事業者への執行の在り方など)
 ⑹ 買取りサービスに係る考え方の整理
   買取サービスについて、「自己の供給する…役務の取引」に当たり規制対象となり得ることを確認されました。今後、関連する運用基準が改定される見込みです。
 ⑺ 適格消費者団体との連携
 ⑻ 法執行における他の制度との連携
 ⑼ 都道府県との連携
 ⑽ 不実証広告に関する民事訴訟における立証責任等

2 中長期的に検討すべき課題
 ⑴ 課徴金の対象の拡大
 ⑵ デジタルの表示の保存義務
 ⑶ 供給要件(「自己の供給する商品又は役務」について)
 ⑷ ダークパターン

 2022年12月27日

 第8回ステルスマーケティング検討会(予定)
  https://www.caa.go.jp/notice/entry/031490/
 ・景表法5条3号に基づく告示として、ステルスマーケティングを規制する告示を新設することの提言が行われる見込みです。

3 当事務所での対応実績

 BtoC-Eコマースの分野では、種々の法律の横断的な知識が求められ、かつ、個々の商品・サービスの内容に即した実践的なアドバイスが求められます。当事務所では、Eコマースについて豊富な知識と経験を有する弁護士が在籍し、様々な場面についてリーガルアドバイスを提供してきた多数の実績があります。
 当該アドバイスを提供する中で、実務的に有用であり、一般化できると思われる点について、「NBL」(株式会社商事法務)において連載で解説したところ、2022年8月、情報を刷新しつつ集約して書籍(『BtoC-Eコマース実務対応』)を刊行いたしました。
 当事務所では個人情報関連のご相談も多くお受けしており、BtoC-Eコマースに限らず、個人情報の取扱いに関する幅広い案件について、的確なリーガルサービスをご提供することも可能です【取扱分野ページ】。

Eコマース実務対応(規約作成上の留意点等)(第12回・完)個人情報保護法に関する留意点(3)
Eコマース実務対応(規約作成上の留意点等)(第11回)個人情報保護法に関する留意点(2)
Eコマース実務対応(規約作成上の留意点等)(第10回)個人情報保護法に関する留意点(1)
Eコマース実務対応(第9回)Eコマースに関連する近時の立法動向概観・総括
Eコマース実務対応(第8回)サイト表示に関する留意点(2)
Eコマース実務対応(第7回)サイト表示に関する留意点(1)
Eコマース実務対応(第6回)規約運用・変更上の留意点
Eコマース実務対応(第5回)規約作成上の留意点(5)
Eコマース実務対応(第4回)規約作成上の留意点(4)
Eコマース実務対応(第3回)規約作成上の留意点(3)
Eコマース実務対応(第2回)規約作成上の留意点(2)
Eコマース実務対応(第1回)規約作成上の留意点(1)

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