(国内)BtoC-Eコマースに関する法規制対応(2023年上半期の主な動向概観を含む)

                                    (2023年7月20日更新)

1 BtoC-Eコマースを取り巻く状況

 SNS やスマートフォンの普及に伴い、BtoC-Eコマースは急速に発展し、その市場規模も年々大きくなっています。特に、2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生活様式の変化に伴い、物販・デジタル分野のBtoC-Eコマースの市場規模が大幅に拡大しています。

 2021年の日本国内の消費者向け電子商取引(BtoC-Eコマース)の市場規模は、20.7兆円でした(※1)。2020年には、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴い物販系の市場規模が拡大した一方で、主として旅行サービスの縮小に伴いサービス系分野の市場規模が大幅に減少し、全体の規模は2019年に比べ縮小しました。しかし、2021年には、2020年に比べ全体的に規模が拡大し、2019年の市場規模を超えるに至りました。

 2021年には徐々に外出機会が回復したものの、その中で市場規模が拡大したことを踏まえると、BtoC-Eコマースが消費者に定着してきたといえそうです。

※1 経済産業省「令和3年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」(2022年8月公表)
  

2 BtoC-Eコマースを巡る法規制(「規約」、「表示」、「プライバシーポリシー」関連)

(1) 複数の法規制
 BtoC-Eコマースにおいては、通常、消費者と交渉等を経ずに画一的に取引を行い、契約内容に関して民法の任意規定を補完・修正するため、取引に関する規約が重要です。その際、民法の強行規定や消費者契約をはじめとする法令により有効性が否定されないか、規約の運用、変更等についても問題ないか、検証する必要があります。
 また、Eコマースは非対面取引であり、口頭での説明等は予定されていないため、消費者に対する説明や誘引方法として、Webページなど広告表示も重要です。消費者向け広告表示については、景品表示法や、通信販売に関する特定商取引法に基づく規制を考慮する必要があります。
 これらに加えて、取り扱う商品・サービスの種類によっては業法を遵守すべき場合もあり、Eコマースでは、通常、消費者(顧客)の個人情報を取得するため、個人情報保護法も遵守する必要があります。その際、「プライバシーポリシー」の作成・運用が重要です。
 更に、サイト表示等について著作権法をはじめとする知的財産法、決済に関し資金決済法や割賦販売法など様々な法令に留意する必要があります。
 これらの法規制は、民事ルールと行政ルールが混在しています。いかなる法令が適用され、違反しないような対応はどのようなものか、具体的な場面ごとに検討・対応が必要です。

(2) 最近の動向
  昨今では、インターネットを取り巻く技術の進歩や社会情勢の変化に伴い、Eコマースに関する法改正等の動きが活発です。例えば、消費者保護法に焦点を当てると、2023年上半期には主に次のような動きがありました。

 2023年3月28日

「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)制定 施行は10月1日
・一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を、景品表示法5条3号に基づき不当表示と指定する告示(以下「ステマ告示」)が、パブリックコメントを経て制定されました。ステマ告示は、2023年10月1日に施行されます。
https://www.caa.go.jp/notice/entry/032672/

 2023年5月10日

2023年景品表示法改正法成立
・同改正は、①事業者の自主的な取組みの促進、②違反行為に対する抑止力の強化、③円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等を基本的な柱とし、上記①の主なものとして、不当表示の疑いのある表示をした事業者が是正措置計画や影響是正措置計画を申請し、認定を受けた場合には、措置命令及び課徴金納付命令が行われないという「確約手続」制度が導入されます。
・当該改正法は、主に、公布日である2023年5月17日を起算日として1年6か月間の範囲内で政令により定められた日に施行され、「確約手続」に関する具体的な運用方針などについては、施行日までにガイドラインで具体化される見込みです。今回の法改正は、基本的には、不当表示が行われた場合における手続等を整備するものであり、違反行為が追加されるといったものではないものの、「確約手続」の運用方針次第で、平時・有事ともに実務対応に影響が生じることがあるでしょう。
・なお、衆議院・参議院ともに、委員会での採決の際に附帯決議が付され、今後、ガイドラインで以下の点を明確化することが義務付けられています。
 (a) 確約手続を利用可能な事案・事業者の対象範囲
 (b) 消費者に対する妥当な額の返金が措置内容の十分性を満たすために有益であること
 (c) 確約手続の対象事業者名・事案の概要を公表すること
確約手続の認定時には、公表することが見込まれています。
(衆議院)https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku%20/019721120230411005.htm
(参議院)https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/211/f421_042801.pdf

 2023年6月1日

2022年消費者契約法改正法施行
・事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項について、事業者の重大な過失を除く過失の場合に限り適用されることを明らかにしていないものは無効となりました(改正後消費者契約法8条3項)。

なお、消費者庁ウェブサイトで景品表示法に関しQ&Aが公表されており、そのうち景品Q&Aが2023年6月末に更新されています。内容については精査が必要と考えますが、従前実務的に採用されていた考え方が明示されるなど、参考になる点もあります。本ページではご紹介にとどめます。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/premium/

3 当事務所での対応実績

 前述のように、BtoC-Eコマースの分野では、種々の法律の横断的な知識が求められ、かつ、個々の商品・サービスの内容に即した実践的なアドバイスが求められます。当事務所では、Eコマースについて豊富な知識と経験を有する弁護士が在籍し、様々な場面についてリーガルアドバイスを提供してきた多数の実績があります。2022年8月、これまでのご相談対応に関する情報を刷新しつつ集約して書籍(『BtoC-Eコマース実務対応』)を刊行いたしました。
 2023年は、ステマ告示への対応に関するご相談も多くお受けしております。
 また、当事務所では、個人情報関連のご相談も多くお受けしており、2023年6月16日に改正法が施行された電気通信事業法に関するご相談もお受けしております。BtoC-Eコマースに限らず、個人情報の取扱いに関する幅広い案件について、的確なリーガルサービスをご提供することも可能です【取扱分野ページ】。

記事に関連するセミナー・執筆情報

 【セミナー】
  ・2023.08.24 [2023年版]BtoC-Eコマース主要法制の必須知識と最新動向 ~サイト表示や利用規約を景表法、特商法、消契法、民法等の観点から概観~

 【執筆】
  ・「導入されるステルスマーケティング規制の概要及び対応」(大江橋ニュースレター 2023年7月号)著者:古川 昌平
  ・「 ステマ規制を考える―仮想事例を通じて」(NBL1246号(2023.7.15)72頁以下)著者:古川 昌平・簑田 由香

    記事に関連する弁護士等の情報

    ページTOPへ