米国連邦倒産法(チャプター11等)
日本企業にとっても重要性を増すチャプター11
グローバル化の進展に伴い、日本企業が米国企業と取引したり、米国子会社を保有するケースが増加しています。そうした中、日本企業が、取引先の米国企業のチャプター11手続への対応に追われたり、米国子会社についてチャプター11の申立てを検討する機会も増え、チャプター11への理解がますます重要になっています。また、直近では、自動車部品メーカー大手のマレリホールディングスによるチャプター11申請が注目を集めました。
ひとたびチャプター11の申立てがあると、利害関係者の権利関係に大きな影響を与えます。まずは、オートマティックステイ(Automatic Stay)と呼ばれる、債権者の個別的権利行使の禁止の効力が生じるため、債権者はその効力を正しく理解して対応する必要があります(①)。また、取引債権者にとっては、自社利益の最大化のための方策が大きな関心事項となります(②)。さらに、チャプター11の申立てと同時に行われるFirst Day Motionsの内容を速やかに把握することで、その後の貴社にとっての適切な対応判断が可能となります(③)。そのほか、債務者がチャプター11を利用したスポンサー支援型の事業再建(363条セール)を行う場合には、債権者の立場からもその理解は非常に重要です(④)。加えて、貴社が債務者との間でライセンス契約を結んでいる場合は、当該ライセンス(知的財産権)の取扱いが大きな問題となります(⑤)。
そこで、以下では、取引先企業についてチャプター11の申立てがあった場合、日本企業にとって特に関心が高いと思われる事項について、筆者の米国留学の経験を踏まえ、各制度の概要と実務対応について解説いたします(以下のリンクから各事項についての詳細記事にアクセスいただけます。)。
① 米国倒産手続① - オートマティックステイの効果と留意点
② 米国倒産手続② - 取引債権者が取り得る方策
③ 米国倒産手続③ - First Day Motions
④ 米国倒産手続④ - スポンサー支援(363条セール)
⑤ 米国倒産手続⑤ - ライセンス契約(知的財産権)
以上
(作成日:2025年8月5日)
文責: 弁護士法人大江橋法律事務所 弁護士 辻田 俊幸
本稿は法的助言を目的とするものではなく具体的案件については別途弁護士の適切な助言を求めていただく必要があります。
本稿記載の見解は執筆担当者の執筆当時の個人的見解であり、当事務所の見解ではありません。
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